藤沢周平を読む「用心棒日月抄」「孤剣」「刺客」 〜時代小説の黄金比を見た!時代劇の面白さここにあり〜

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はじめて藤沢周平の時代小説を読んだ。
これがべらぼうに面白い。

※べらぼうという言葉はネガティブな意味なので普段はこういう使い方はしない言葉だと思いますが気分的には「べらぼう」ってな感じでした。

時代小説の最高峰は隆慶一郎の


吉原御免状 (新潮文庫)

だと思っていたのだが藤沢周平の


用心棒日月抄 (新潮文庫)

シリーズは吉原御免状とは違った切り口で描かれた穏やかで痛快なミステリー作品であり、とにかく面白い。
きっかけは雑誌「一個人」で浪人物の傑作として紹介されていた「用心棒日月抄」を読んだことだ。連作小説なので最初は「かったるいなあ」と思いながら読み始めたのだが1話を読み終える頃にはもう手がとまらなくなり、一気に3巻まで読んでしまった。3巻の


刺客―用心棒日月抄 (新潮文庫)

を読む頃には主要なキャラのイメージが頭の中にできあがり、映像を観ているような感覚で読むことができた。この楽しさは格別である。まるで長い時間を一緒に過ごした友達と過ごしているような感覚である。

この小説が他の時代モノに比べて際だった面白さを感じさせるのはずばり卓越した「キャラ設定」によるものだ。

スペースコブラかクラッシャージョウを彷彿とさせる幅のある正義漢である主人公の又八郎と無骨でひょうきんで腕のたつ細谷のコンビ。
仕事の口利きを行う吉蔵(たぬき面)。
そして3巻ではなんといっても「佐知」の存在感が素晴らしい。
後書きにも書いてあったが「いい女」である。
文章ひとつでこういう女性像を描き出すのだから恐れ入る。

久しぶりに強烈な充実感のある読書時間を体験した。
日本に生まれて時代モノの日本語の小説を読むことができる悦びを実感している。

用心棒シリーズはもう一冊


刺客―用心棒日月抄 (新潮文庫)

が残っている。
これからまたあの3人に会えるのかと思うとこれに勝る幸せはない。

■用心棒シリーズ


用心棒日月抄 (新潮文庫)


孤剣―用心棒日月抄


刺客―用心棒日月抄 (新潮文庫)

凶刃―用心棒日月抄 (新潮文庫)