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2004年08月08日

「矢場とん」の夜と幸せの秘密

東山魁夷のインタビュー映像を観た。
なんて優しい話し方をする人なのだろう。
ひとことひとことしっかりと言葉を伝えようとしているのがわかる。
熱く語るという雰囲気ではないが言葉の奥にある強さは本物である。

「外国旅行をしてもこういう所をかこうと思って歩くのではなくて、そういう気持ちを捨てて歩いていると相手の方から声が聞こえてくる。例えばですね、向こうから発信音がでているんだろうと思うんですけれど、だけれどもこちらの機械がですねあまり雑音ばかり入っていると聞こえないわけなんですね。それと波長があってないといけない。ですから両方がひとつに結ばれるというのは両方の生命の源泉がひとつだと感じるからだと思うんですね。これが木は植物で人間は人間で、人間が生物の中で一番えらいんだという風な気持ちをもっていたんではいつまでたってもですね、発信音は聞こえないしですね。そしてまた生命がつながっているものですよという音が聞こえないような木がしますね。」

穏やかな声である。
しかしこの言葉にはハっとさせられた。
心に雑音が多ければ大切な信号が自分に発信されていても気づくことはない。

自分の日々など雑音だらけではないか。
なるほど自分には信号が聞こえていなかったに違いない。

考えてみれば素直になればいいだけであり簡単なことだ。
悋気をなくし、素直になる。
それだけで毎日は大きく変化していく。

自分の心なのだからコントロールすることは可能だ。

午後7時過ぎ、急にイメージがひらめいて銀座の「矢場とん」にいった。
わらじ定食を注文した。
お茶を飲んだ瞬間、やまけんが串カツを食べていた絵が思い浮かんだ。
メニューをみると串カツ定食もある。

「すみません串カツ定食に変更していただけますか」

店の人に告げると

「はい、どう、大丈夫?」

と料理人に確認をとると、

「あ、すみません、もう揚げはじめてしまったんですよ」

カウンターの向こうで料理人が答える。

「そうですか。それでは結構です。ありがとう。」

と我ながらなんでそんなに楽しそうに話すのだろうかと思うくらいにさわやかかつ丁寧な言葉で話していた。するとである。何故か奇跡が起こった。

インターホンから二階の客の注文を伝える声が聞こえた。

「●●とわらじです。」

やおら調理場で声が飛び交い、女性の店員が笑顔で近づいてきて

「あの、いま別な方のご注文がありましてよろしければお客様の注文をそちらと交換して串カツ定食に変更することもできますが。」

といった。

「そうですか!では串カツ定食でお願いします!」

厨房の料理人達も笑顔でこちらに挨拶をしている。

「よろしければ、味噌ダレとソースとを半分づつという半々にもできますよ」

「お、じゃあ、半々でお願いします。どうもありがとう!」

となぜかトントン拍子で物事が運んでいった。
とてもいいコミュニケーションがとれたなあとなんだか嬉しかった。

これって何なのだろうとしばらく考えた。
なんだかわからないがともかくこの世の中、世界のありようというのは気持ち次第で驚くほど簡単に変容するのではないだろうか。

食べ終えてから余韻を楽しんでいると先ほど機転を利かせて注文の変更をしてくれた料理人がお茶のおかわりを持ってきてくれた。

感じのいい青年である。
月島なので近いんですよ、と話をしていると「先週、もんじゃにいきましたよ」という。どこのもんじゃがいいのか教えてくださいときかれたので幾つか店の名前を教えてあげた。会社の寮が佃大橋のたもとあたりにあるそうで月島にはよくいくのだそうだ。

「じゃ、魚仁いったことある?」

と月島No.1のパワフル居酒屋を紹介すると是非いきたいという。ノートを取り出して地図をかいてあげたらマネージャーもやってきて、しばし月島居酒屋談義にはながさく。とても丁寧に気持ちのよい笑顔でみんなが「ありがとうございました」見送ってくれた。こんな風に食事をして、店の人と話をして楽しい気分になるというのは幸せなことだ。

良質なコミュニケーションは人を幸せにするのである。

これは人生の秘訣なんだろうなと思った。
外にでると夜風が気持ちよくて心がふわりと浮いたようだった。

通りを数人のおじさんたちが歩いていく。

「そういえばこのあたりにカガヤってなかったっけ」

すれ違いざまにそんな声がきこえた。
なるほどこれも受信機に雑音があったら聞こえない信号に違いない。

投稿者 TKM : 2004年08月08日 01:39

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コメント

矢場とん!懐かしいです。
昔、名古屋に3年間通っていた事があって、大須の本店たまに行ってました。本店は、
店内ドラゴンズファンな雰囲気で(ドラゴンズのグッズが店内あらゆるところに置いてある。
名古屋文化圏でドラゴンズ熱狂ファンの事は「ドラキチ」って言う)、
店員はおばちゃんで青年はいなかった記憶が。
それにしても、矢場とんまで東京侵出するなんて時代は変わったねー。

大須は、浅草と上野と下北沢と秋葉原を足して割らない雰囲気の街です。
ちなみにわたしは、わらじとんかつ派です。

今度銀座で食事する時はつれてってね。
ではー。

投稿者 iwtk : 2004年08月08日 23:25

しあわせは気の持ちようだというのは
すごくよくわかる。

投稿者 chaki : 2004年08月09日 17:57

わらじとんかつも悪くないね。次回は盛り合わせにしようと思ってます。いきましょう。

投稿者 かがや : 2004年08月10日 20:44

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