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2004年01月30日

その料理いけますか?

家に戻ってから録画しておいた「極人の休日」を観る。
立川談志の回である。

あるダイアログで爆笑してしまった。
思い出すといまも笑える。

談志の家に遊びにきた市川染五郎に談志がもてなしに何か料理をつくると言い出す。
二人して台所にいくのだがこの台所がまあ田舎の家の台所という感じで好感が持てる。
全然洒落ていないのだ。

食材ばかり山ほどあるのだがどれもこれも「古い」。
談志は物を捨てるのが嫌いでお腹を壊しても「古く」なったものを食べるのだそうだ。
なものだから家には冷蔵庫が4つもある。

肉を切りはじめた談志。
ところが材料がない。
うどん粉がない、卵がない。
「買ってこいこのやろう」
と弟子にひとっ走りさせる。

ニヤリと笑って宣言。
「じゃあね、まずはオードブルをつくる」
そういって何やらあちこち探し始める。
この台所、ホントに台所な風情で。
20年くらい前の新築するまえの父の実家を思い出した。
「あれがあるだろ。ワカメ!ああ、そうさ。うちのは古いぞ。ふるいったって10年くらいだ」
そういって水をはったボールにワカメを投入し、鼻歌まじりでいろいろ混ぜ始める。
マヨネーズと胡麻をあえてカットしたワカメと混ぜる。
そうそうこのワカメ、増えるワカメと違って長い。
50cm~1mくらいあるワカメである。
これをチョンチョンと切ってあえていく。
色はなぜか二日目のワカメのみそ汁みたいに緑というよりも土色に近い。
できあがったワカメの和え物を味見する。

「どうですか?いけますか?」

染五郎が談志に訪ねる。
談志は一拍おいて答えた。

「ん?いけないねぇー」

カワイイというのかな。この間が最高だった。毒舌の談志がこの瞬間、素に戻る。照れくさそうに口にした「いけないねー」という言葉は何も背負っていない。何も考えることなく自然とでてきた言葉である。これが良かった。60分枠だから正味40分。その時間の中でベストの場面である。
それから3回くらい談志のマネをして笑っていた。

「ん?いけないねぇー」

言えないよ、この言葉。
人は言葉で生きている、とはCSLの茂木さんの言葉だ。
より良く生きたいと願うなら人は自分の無意識を磨かなければならない。
無意識を磨くのは言葉である。
その人がどんな言葉を使うかでその人の生が決まる。
だから人は言葉を磨かなければならない。

一度だけ、生で談志の話をきいたことがある。
バンダナに釣りに行くときのダウンジャケットであらわれた談志はいきなり、

「健康の話しろったって、オレは来年死ぬ予定なんで」

と始まった。言葉の使い手である。2000人からの聴衆がいっきに引き込まれていた。
そういえば前に図書館で談志の落語のCDを借りてきて聴いたことがある。それまで落語家だという認識がなかった。

cover

GOという映画で主人公がウォークマンで落語を聴いていたのをみて落語をきいてみようと思ったのだ。綾小路きみまろみたいにポンポン話が進んでいく話術とは違ってゆったりとし、これといった盛り上がりもない。しかし、なぜか聞き入ってしまうのだった。

しかし、どの話よりもさっきみた

「いけないねぇー」

が僕にとってはベストだが。

投稿者 TKM : 2004年01月30日 03:54

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コメント

2年前、吉本の新人賞で審査員だった談志師匠が
テツ&トモに対して「おまえら、こんなところにいるべき人間じゃねーだろ?オレの言ってる意味わかるよな?な?」
といって物凄く低い点数を出したことを覚えています。
落語にしろ、語りにしろ、うたにしろ、「聴覚」のみで心に響く「言葉」を紡ぎだす力を持ったひとは本物だと、個人的に思います。

私も落語は「聴く派」です。

関係ないですが「GO」はとてもよかった!
渡辺謙さんのノミネートもうれしいニュースですが、「たそがれ清兵衛≒トワイライトサムライ」の作品賞ノミネートの方が・・・。むしろうれしいです!

投稿者 さち : 2004年01月30日 22:26

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