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2004年02月28日

「ほしのこえ」と「ナンバーファイブ」~ポストジャパニーメション・パーソナルアニメーションの行方

恵比寿の写真美術館

昨日から恵比寿にある東京都写真美術館で文化庁メディア芸術祭の受賞作品が展示されている。
初日は「ポストジャパニメーションの担い手たち」と題した対談があった。
ゲームなどのムービーシーンを主に手がけるアニマの笹原さんと「ナンバーファイブ」(松本大洋原作)のアニメーションを手がけた神風動画の水崎さんらのトークセッション。

会場や進行はお世辞にも「良い」とはいえない。
進行役の滑舌が悪く質問がボソボソといった感じで勢いがない。
人を集めてやっているイベントなのだから自分たちだけで話しては仕方ない。
その場にいる人たちを巻き込んで「場」をつくっていく、という努力が必要だ。
その点、笹原さんはなかなかがんばって「場」づくりに努めていた。
会社を率いているだけにそのあたりの空気の読みは的確である。
しかし、イベントは社内会議ではないので照れ隠しにバカを装った物言いをするのはいただけなかった。
自分を卑下した物言いは逆説的に自己の正当化を強調しているようにしか見えない。
素直に気取らずに話してくれたらもっと気持ちよかったのに、と思った。

さて、CGIに関しては二者の作風は全くことなる。
笹原さんは自身もメジャー路線を志向しているといっているように作品はコマーシャル(商業)ベースの「CGっぽいムービー」である。ハリウッドの作品群に用いられるVFXとしてのCGとは方向性が違う。良い意味でゲーム用のムービーである。一目で「CGだ」とわかるがつまらないわけではない。しっかりとしたモデリングといわゆるCGムービー的な演出、派手さなどセルアニメーションの面白さとは異なるダイナミズムがある。CGの職人がつくるムービーの一つのカタチである。

一方、水崎さんの作品は独特のレンダラーを用いたアニメ基調でぱっと見た目には水崎さんの作品群に新鮮みを感じた。
独自のレンダリングによって3Dの世界を手描きのセルアニメーションのようにしていく手法は最近はいろいろな場所でみられるようになったが水崎さんの作品はその出来が飛び抜けて良い。「どうだモデリングしたぞ」という感じが全くない。
3Dのオブジェクトからあの絵が生み出されているとは容易には信じがたい。
あれならば2~3ヶ月・2~3人という非現実的な期間と人員でで20分強のアニメ作品(セルアニメ)を作成する力業も頷ける。

笹原さんがやっているようなCGの場合はそれがPC上か実際の空間かの違いがあるだけで巨大なセットをつくり、多くのキャストを配置、演出する部分は同じだから時間も人もかかる。

一方でアニメ的な作品を目指す水崎さんの場合は場面のアニメ的な演出が命といってもいい。
だから必ずしも大人数が必要とされるわけではない。
より個人的なセンスが問われる。

二種類のCGの方向性をみせてもらったがどちらがどちらに勝っているということはない。
目指している方向性が異なる。

一昨年公開された新海誠監督の「ほしのこえ」はたった一人でもこれだけ「面白い」作品がつくれるのだということを世に知らしめたエポックメイキングな事件であった。

以後、パーソナルアニメーションの可能性が開かれ「ウルダ」などいくつかの個人のアニメ作家による商業用アニメーション作品が発表されていくわけだが重要なのは「ほしのこえ」の成功はあの作品が必要最小限のスタッフでつくられた、ということである。

数万枚というセールスは全く無名の個人がリリースしたタイトルとしてはとてつもない成功である。しかし、同作が数十人のスタッフでつくられていたとしたら作品の中身が全く一緒であったとしても収支がマイナスになり結果的には失敗の烙印を押されていたかもしれない。

今年公開予定の「APPLESHEED」もそうだがフル3DCGでつくられた世界とキャラをトゥーンレンダリングで2D的な映像に変換していくという手法によって一部のセルアニメのあり方は変わっていくのだろう。宮崎アニメのような大がかりな体制ではなくても面白い脚本と演出力があれば十分楽しめるセルアニメーションが作成できる環境がようやく整ってきた。

組織によるシステマティックで機能的な制作体制でなければつくりだせない種類のCGムービー。
個人が作品全体に深く関わることのできる「アニメ」的なCG。
双方が担う面白さの方向性は大きく異なる。

僕個人としては今後「ほしのこえ」のようなパーソナルアニメーションという新しいマーケットが拡大していき、個人のアニメーション作家が活躍できるマーケットが定着し作品の幅が広がり、ユーザが成長していくことでようやくアニメーションは揺籃期を終え、メジャーエンターテイメントとして認知されていくのだと思う。

トークセッションでアニメの監督たちがウェブの可能性にも言及していた。彼らは一様に可能性を感じながらも課金やインフラを理由に「自分にはできないが」「現在は難しい」ということを強調していたが
「ほしのこえ」や新海監督の次回作(パイロット版が更新されていた)がネットでダウンロード販売されるとしたら、500~800円くらいなら払ってもいいと思う。ストリーミングという形式だとクオリティが回線状態に依存しまうので「買いたい」とは思わないが「一つのマシンでだけ再生可能」というID管理でもいいからQTやMPEGなどローカルに保持できるファイルの形状で1~2Gくらいでもいいからファイルをダウンロードできたら迷わず買う。

モノにしかお金を払わない、というのは間違いでアダルトサイトが課金もでるで十分に成功しているのをみてもわかるようにその情報に価値があると思えば人はデータにもお金を払う。情報の価値と値段のクリティカルマスが存在し、ネットコンテンツの世界にはまだその基準ができていないのである。

話が少し脱線した。

メジャー感のあるCGムービー。
そして個人の作家性で勝負する「アニメ」的なCGムービー。
この二つの方向性が今後どのような作品をつくりだしていくのか。
一ファンとしてはますます楽しみである。

投稿者 TKM : 2004年02月28日 06:16

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コメント

コメントしなくては ;)

僕が新海さんから感じたのは
「受け手」と「作り手」両方の感覚に満ちていること。

これは難しいよなぁ~

投稿者 PEN : 2004年02月28日 06:55

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