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2004年05月18日

ハイパーカードが消えた理由 ~ビル・アトキンソンさんの話をきく~

銀座Appleストアでビル・アトキンソンさんのお話をきいた。
アトキンソンさんはハイパーカードや初代AppleのGUIを開発した人である。

登場したアトキンソンさんは意外にグッドシェイプで鍛えている感じである。
現在は自然写真家として活躍されている。
前半はApple初期の裏話など。
後半はカラーマネジメントについて。

前半は通訳が逐次通訳で対応していたが後半のカラーマネジメントについてのお話は日本語で聞いてもほとんど外国語と思われるような専門用語のオンパレードの為、Appleの社員らしき男性(この男性がなぜか妙にダンディというか胸はだけてます系のいでたちでやり手のエグゼクティブだぜオレは、な雰囲気を十二分に醸し出している)がかわって通訳を務める。しかしいかんせん付け焼き刃。かみすぎで話がつっかえるは聞きづらいはつまらないはでどうしようもない。はだけっぷりもこうなると仇になる。

とはいえ約2時間におよぶAppleの基礎をつくった生ける伝説プログラマーの話は十分に刺激的であった。アトキンソンさんがAppleでMacをつくっていた頃、社員は30人だった。けれど辞める時に社員は15000人になっていたそうだ。さらっといっていたがこの変化は凄まじい。このドライブ感を体験できたということは素晴らしい経験だったのではないだろうか。

アトキンソンさんは

「いまだにハイパーカードをつかっていますよ」

と言っていた。フルスペックのG5に23インチのシネマディスプレイ。それがアトキンソンさんの環境だ。現存する最高スペックのMacにしてあるといっていた。そこで使っているソフト群について説明してくれた時に

「クラシック環境も入れてあるんです。ハイパーカードをつかうのでね。」

ハイパーカード。
創られたのは随分昔だがいまだに優れたインターフェイスの使いやすさは健在である。どうしてMacにハイパーカードが付属されなくなったのか疑問に思っていたのだがアトキンソンさんが教えてくれた。

「ジョブズとスカリーの対立があったことはご存じですよね。そのスカリーがハイパーカードのライセンスを持っているのでAppleはもうハイパーカードを使えないんです。残念ですけれどAppleがハイパーカードを使うことはないと思います。」

そういう理由だったのか。技術的な問題ではなく政治的な問題が原因で創造性を高めるソフトウェアが忘れ去られていくのは残念だ。

ハイパーカードの面白さは使ってもらはないとわからないのだが簡単にいうといまの1000倍の手軽さでWebページをつくることができる、感じである。

「そうそう私にとってマーク・アンドリーセンはヒーローなんです。何故って、彼がモザイクをつくったことで結果的に私が実現したいと思っていた世界が実現したんです。PC同士がつながっていろんな人が情報を共有する。それが私がハイパーカードでやりたかったことなんですよ。」

マーク・アンドリーセンを「私のヒーロー」ですと嬉しそうに語るアトキンソンさんがとても印象的だった。アトキンソンさんは根っからのエンジニアで自分の夢を追っている。カラーマネジメントのソフトを開発したのも自分の写真を完全な色で印刷したいと思ったからだといっていた。解説をきいたらアトキンソンさんの開発したソフトを使うと印刷において驚異的な成果を出すことができる、とのことである。

彼はもともとインターフェイスの研究者・開発者なのだがその彼がいま考えている未来のインターフェイスについて一つだけ教えてくれた。

アトキンソンさんはそのコンセプトをタッチプレートと呼んでいた。
キーボードに変わる入力用のインターフェイスである。
そこにはキーのような凹凸がない。完全な平面である。グラフィカルにつくられたもう一つのディスプレイと考えればいい。

板の上に無数の円が配置されている。
数は通常のキーボードの二倍くらいである。
この円のそれぞれにキーを割り当てる。
シフトでもいいし、アンドゥーでもいい。

面白いのはそこから先である。
これらの円はそれぞれユーザが好きなキーを割り振ることができる。
どんな言語でもいいので他言語対応も可能だ。

現在のキーボードは「打つ」「叩く」という動作が必要だが彼の考えるキーボードは「触る」ことで入力を可能にする。なめらかにすべるように優雅に入力する。

「例えばピアノをひくときに指は滑らかにうごきますよね。鍵盤を滑らすように指を動かすとメロディがこう流れる。同じようにこのタッチパッドでもスっと指を滑らせるとTHEという単語になったり。Iという文字をたくさん使うならIというキーがたくさんあったりすればいいと思うんです」

少し詳しく解説するとこういうことだ。
例えば英語だったらホームポジションの位置からINGという配列でキーがならんでいる。その下にはTHEという文字が配置されている。
通常、文字を入力するにはそれぞれの文字を一つづつ打ち込まなければならない。
例えばTHEという単語だとアクションは3つ必要になる。
しかしタッチパッドならば指をスっと滑らせるだけでTHEが入力される。
ワンアクションである。

僕たちが考えるのとは全く違う発想の仕方だ。
こういう人がMacをつくったのだ。
発想のベースになっている出発点が全然違うと感じた。

よりフィーリングな世界からきている。
心地よさとか優しさみたいな閃きというよりも遊びというか。
PCは単なる性能の向上ではなく人の気持ちよさをより高め、使う人の意識やモチベーションを高めていく、という方向に向かっているのだろうと思った。

++++++

夜から矢坂さんとアトキンソンさんの話をもとにブレストをした。
アトキンソンさんの話はPCの世界の話だが僕たちが話したのはネットワークの世界の話だった。ネットワークによってコンテンツはどのように変貌していくのか、それについていろいろと議論した。次回はその話についてまとめたい。

投稿者 TKM : 2004年05月18日 05:06

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コメント

いやぁ、おもしろいね!
いい人にインタビューしたな!

学生時代(10年前)おれも
ハイパーカードにお世話になった。
いろいろな作品をこれで作ろうと思った。
あたらしい何かを作れると思った。

で、実際、おいらのジャンプでの受賞作
「でられない町」の原型(迷宮の町)はハイパーカードでつくった!

ハイパーカード…。バージョンアップした
今の技術に対応したものをぜひつかってみたい…。

投稿者 GC_Factory : 2004年05月18日 10:52

金子もハイパーカード使いだったのか!
そうかー。
昨日のはインタビューではなくてMade on Macという一般公開のイベントで誰でもいけたのです。
昨日直前に発見したので連絡できなかったのだけれど、また、面白そうな回をみつけたらメールいれまーす。

それにしてもアトキンソンさんいい空気だしてました。

投稿者 かがや : 2004年05月18日 12:25

はじめまして、ぷりんの同僚です。
時々blog拝見してます。

懐かしい人物の名だったので思わず。

Mr.アトキンソンといえば最近はダイエット博士やら
コメディアンやらの方が有名ですが、
私にとってはビルこそ元祖Mr.アトキンスです。
ハイパーカード、懐かしくて思わず翔泳社の
昔の解説本を引っ張りだしてしまいました。
搭載されなくなったのにそんな理由があったとは。
それにしてもなんでスカリーが権利を。。。。

投稿者 CyberOptic : 2004年07月18日 07:25

こんにちは。
コメントありがとうございます。

ハイパーカードのインターフェイスはいまつかっても遜色なくよくできていますよね。ブログやホームページもハイパーカードのしなやかさでつくれたらもっともっと広がっていくのだろうな、と思います。

Appleのインターフェイスデザイン能力でブログやHP開発ソフトをつくったらどんな風になるのだろうと思い描いてしまいました。

投稿者 かがや : 2004年07月20日 17:26

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