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2004年12月22日

壁の家との戦い

◆タドコロ家のトイレが変わった

「引っ越して流れの方式が変わった。前は直結だったのが今はタンクシステムなので流すまでにタメをまたなきゃいけないんだよ」

日曜の朝にビールを飲んでいると友人のタドがそういって入ってきた。確かに方式がかわったらしい。しかし、それは修正可能なはずだが。そう思いながらゴミ箱を片づけていると

「ゴミ箱おもしろいね」

と言われた。黒いプラスチックの硬度をもったビニールで縁取られた紙のゴミ箱を使っている。

「手が切れそう」

「いや、大丈夫なんだよ。柔らかいから。ほら」

そういって縁を折ってみせる。もう関心は別なことにうつった模様である。

「あ、ルービー切れたね。いきますか。サイフとりに戻ってきます」

そういって上の階へタッタッタと走っていった。

◆釣りとトーリュウ

船で浦にでる。わりと大きい船だ。100人くらい乗ることができる。
浦について釣りをはじめる。基本的には手投げである。手釣りだ。
海底には溝があり、そこには障害物がある。だからそこに投げる。
進行方向に向かって大きく投げる。彼の糸にはタイがかかっている。しかし、手釣りなので手が切れやしないかと心配である。僕も真似て投げてみる。遠くに投げたつもりだが根がかりが不安でいまいちベストの投げとはいかなかった。

天気はよい。
海の色もよい。
海びよりな一日である。

お台場のイベント会場には人が集まりつつあった。
ゲストの名前をみると岩竹徹と書いてあった。

「へえ、岩竹先生、こんなイベントでてたんだ」

しばらく会場でまっていると。

「3、2、1。皆さん、岩竹徹先生です」

けたたましい登場の爆音とアナウンサーの声と共に岩竹先生が登場した。
が、先生ひとりではなく100人くらいの他の人々も一緒に登場した。学生がブルー地に白の線のはいったジャージの上に学生服をきて登場した。ジャージの上にスカートをはいている人もいる。
下妻物語のイメージである。
しかし、先生はこれからそこで何をするのだろうか。
曲の発表だろうか。
見守っていると

「若者はいいね」

などといって議論大会をはじめていた。
ライブと演奏は今日はおこなわれないそうだ。

「曼陀羅の演奏は次回ね。ハハハ」

そういってターンし、舞台衣装のようなクロのデザイン系スーツを翻すを繰り返している。

◆剣道の練習

「刀は振りかぶって打つのではなく、振りかぶりざまに刀を研ぐようにこう左手を添え、打つ」

先生はそういって剣術の解説をはじめた。

「しかし小手がねらわれる」

マネしていたタスケの方へ歩み寄るとすかさずタスケの小手を打つ。
タスケは心優しい町人である。
大学時代の同期のカナイ君と似ていた。

「先生、でも、オレっちがやらなきゃいけねーんですよ」

彼は先ほど、トイレにいくといって下におりていった。
板場の上で自殺未遂の人を発見した。
板場は下で水とつながっており時間が流れていた。
時間におちようとするその人を必至に助けようとする。

「何んでそんなことするんでい」

タスケが叫んだ。

「ですからね。あっしだって。グスン、やりたかねーですよ。でも、ですね。野郎たちがやってきてあれですよ」

男は壁の家に現れた一団から剣道の指南を受けたがそれがいきすぎて追い込まれてしまったのだという。タスケは壁の家の一団の頭領との対決を決意した。それであらためて打つことについて考えはじめた。

「しかし問題がありまして。先生、違和感があるんですよ。打つって。こう振りかぶり。打つ。それでいいのか。宇宙を打ってる気がしねえんだ」

先生と呼ばれた里見コウタロウ風の武士は

「なるほどな。打つとは本来振りかぶって打ち下ろすというものではない。このように刀を研ぐように振りかぶりながら右手の平で刃を背から流す。この時にすでに力は刃を落とすようにはいっていく」

タスケはその言葉どおりの動作をやってみた。なるほど力の伝達が全く異なる理論にのっとっているのがわかる。これまでの抜刀と打撃は物理法則の利用によるものであったならなば、このモーションにはイニシエーション的な力が発生している。カタによって呼び込まれる力を感じていた。

「しかしな。この場合、わかっていると思うが左手があいてしまう。そこを打たれる。どうする?」

確かにその通りだ。タスケはそう思った。いま先生にならったやり方では振りかぶりざまに左手があく。カバーするにはスウェーすることくらいしかできない。幾度練習しても左手の問題はついてまわった。

「どうすればいいですか?」

タスケが懇願した。先生はさもあらんという雰囲気を醸し出しつつ

「だからこのように刃筋をかえて使う」

先生の視覚を借りて刃の動きをのぞいてみると刃は正面に打ち下ろされるのではなく、ではなく3次元的な動きをしていた。小手という最大の弱点を克服するにはこの手法しかなさそうだった。

壁の家の前で練習をしていると入れ墨をした男が叫びながらやってきた。

「船がきたぞー」

そういって男は竹刀をメチャクチャに振り回していた。はて、なんとバカなヤツだろう。タスケはそう思った。しかし、これから壁の家にはいっていこうとうしている自分も大差ない。先生の両肩にも高倉健ばりの唐獅子の入れ墨があった。

先ほど習った剣術を復唱しつつタスケは壁の家タワーへと歩き出した。
中からは道場を転がる男達の音が聞こえた。

投稿者 TKM : 2004年12月22日 11:26

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