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2004年12月24日

皇帝とバーと香港とG氏の邸宅

ホテルで勉強会が行われている。
酔った状態でいかに効果的なIT施策を実施できるかについての講義である。

下をのぞくとマーケティングの講師の女性がカバンをもってやってくるところだった。緑とブルーのカバン。肩にはけっこうな重さがかかっている。大きめのかばん。

年齢は20代後半だろう。
肩くらいまで長さの髪を軽くたばねている。

彼女はサングラスをかけている。
気持ちのいい笑顔である。
階段をのぼっていく。
階段をのぼる足取りは軽やかだが力強い。
彼女のやる気を感じる。

彼女がこの仕事についてもう3年になる。
前に彼女の授業をきいたことがあった。

こちらの勉強会はさきほど終了した。
ベッドで寝ていると3人ほど係の人が入ってきた。

「いつまでこの部屋にいていいんですか?」

彼らに尋ねた。

「もうとっくにでていなければならないんです。いまは特例だったんです」

それから

「はやく後かたづけをするように」

と促された。
そうかセミナーはとっくにおわっていたのだ。どこかで眠り込んでしまったらしい。身体を起こして下界へと降りていく。ビルの入り口の所で知り合いの女性が待っていた。

「どういう人が好みなの?」

彼女にそうきかれた。

「メジャー感の女の人」

といってからそれってどんなだったかなと考えた。道路の向こうを黄色いコートを着た女性が歩いていく。

「ああいう感じ?」

「いや違う。ああじゃない。オレがいってるメジャー感というのは質感のことなんだ」

そういうと彼女の存在は視界から消えた。
地下鉄の入り口に向かった。
何か飲み物が欲しかった。
ミネラルウォーターとコーラを買おうとした。
駅の中にスーパーが併設されていたはずだ。

白い大理石でできた狭い階段を下りていく。
最後の一段をおりたところが4㎡くらいの小さな踊り場になっていた。

スーパーの回転ドアをくぐろうとすると赤い服をきた人に腕をつかまれた。
よくみるとアラハマさんであった。

「あれ、カガヤくん、なにやってんの?」

「アラハマさんこそ何やってんですか?」

「ン?あー、マナブ君がさサンタやってるんだよ、ほら」

そういわれて入り口の方をみると銀のリースをつけた2mくらいの青い箱がおかれており、その隣に青いサンタ服をきたバシ師匠がいる。ひげは白ではなく黒で、目のあたりもマスク地のようなもので覆われている。

「あれ、バシ師匠。サンタですか?」

「そうなんだよ。撮ってく写真?」

「いえ、飲み物を買いたいのでいまはいいです」

「そう、じゃあね」

そういってバシ師匠は子供に囲まれて箱の中に入っていった。
箱の内部はカメラ構造になっているようでその箱にはいって撮影すると青が赤に黒は白に転じ、サンタとの記念写真が撮影される仕組みになっているようだ。プロデュースはアラハマさんのようだったが詳しくはきかなかった。

飲み物を買ってから地上にでるとモロイさんから

「Skype頼むよ」

と電話がきた。
了解したむねを伝えて目的地に向かう。
香港で待っているからとのことだったのでとりあえずは香港まで電車でいくことにした。
社中、大学時代の同期の女の子が水彩で絵を描いていた。
キャンバスはないのだが空中に固定される種類の絵の具だそうで空間が色彩でうまっていく。

僕は茶色のジーンズをはいていた。ふとみるとジーンズに青の絵の具がたくさんはねている。指でこすると少し滲んだ。彼女の服をみるとおなじように絵の具がはねていた。もうひとり同級生の女の子もくわわりそのまま3人で香港まで電車の旅を楽しんだ。

4人がけの座席のシートは緑色だった。
電車を降りようとすると小学校時代の同級生のタチバナが隣のボックスにいた。
紙袋をガサガサやっている。

「何やってるの?」

「うん。これからこのマンガを卸しに持っていくんだよ」

紙袋の中には豪華版の「キャプテン」やらちばてつや系のマンガがたくさんはいっていた。結婚式の引き出物がはいっているような大きめの紙袋である。持ちあげる時に揺れたみたいで本がグチャグチャになっている。タチバナはそれを整理していた。

「そっか。マンガは香港では価値があるかもね」

タチバナにそう告げて電車を降りた。

電車を降りると迎えがきており、会場に案内された。
そこでSkypeをインストールすべきPCを手渡される手はずになっていた。
会場の教室には教壇とスクリーンが下に設置され、机がすり鉢状にならべられていた。

「話はうかがってます。これがPCです。お願いできますか?」

手渡されたPCは17インチワイドスクリーンタイプのWindows端末だった。
右のスロットには通常のPCカードの倍くらいの厚みのあるアタッチメントがささっていた。

「これは?」

G氏に訪ねると

「香港タイプのワイヤレスアクセス回線です」

と言われた。

とりあえずPCを開いた。
このタイプのカスタマイズははじめてみる。
右半分がMacOSX、左半分がOS9になっており、中央で二つのOSが区切られている。

「Gさん、これはもしかしてOS間でファイルが完全にシームレスに移動できたりするんですか?」

「そうです。香港タイプのPCはこういうカスタマイズが有効なんですよ」

なるほど。関心しつつも。まずはSkypeだ。インストールを試みる。
MacOSに対応しているはずなのでまずは自分のサイトからアソブ研にいって、そこからSkypeのサイトにアクセスする。ライブドアのサイトが提供している日本語バージョンはWindows用だから本家のサイトにいかなければならない。

しかし、この程度のことであればG氏にも十分可能だと思うのだが。自分が呼ばれた理由はなんだろうか?

ダウンロードをしようとしてキーボードがおもうように打てないことに気づいた。
変だな。

よくよくみると机が傾いている。
教室の机は全て巨大なキーボードで30枚くらいが半円を描くように配置されいる。それぞれのキーボード・机もまたJISのキー配列にのっとって配置されているようだった。

机が斜めになっており、文字の突起にあわせて凹凸があるものだからPCを設置するのが用意ではない。前のめりになってしまい、うっかりすると前方に落ちていってしまう。

これはらちがあかない。
教室を出て作業を再開することにした。

G氏の邸宅は広いとはきいていたがこれほどまでとは。
城である。
中国の古城だ。

入り口近くの書斎に入って机に陣取る。
周りには子供達があそんでいる。
ソファーではアジアの男がくつろいでいる。

作業の途中でトイレにいきたくなった。
廊下にでるとそこから望む景色に息をのんだ。

廊下は回廊になっており、柱と柱の間から中国の城下町が見える。
はるか彼方に黒い球形のビルがたっている。
球の中は街になっているようだが詳細はわからない。
ともかくすさまじいスケール感である。
ひとつひとつの建造物は決して高くはない。
けれど一辺が1キロくらいあるだろうか。
平安京を1000倍くらいの規模にした恐るべきアジアンシティーが広がっている。
見とれたまま歩き続けると廊下は外につながっており、美術館ののぼりがみえる。
いってみたくなったがそのまましばらく歩き続けた。

二十歳くらいのカップルが角の売店でアイスクリームを買っている。
彼らの言葉は英語が7割くらいはいった中国語である。

歩き続けていたら運河のほとりに出た。
対岸には高さ100mくらいのタンクがある。
外壁は透明である。
スケール感に圧倒される。
富士山を麓からみあげているかのようだ。

建造物と人の間がズレている。
ここでは意味と現実が逆にはいっている。
地上にいるのに高層ビルの屋上から真下をみているみたいだ。
高低のリアリティもおかしくなっているようでクラクラしてくる。
この街では遠くのものほど近くに見えているのだ。

ともかく一度G氏の邸宅に戻ろう。
きたみちを引き返すことにした。

万里の長城のような石畳の道を歩く。
松の木の並木道を抜けて美術館の方に向かう。
裏手がG氏の門だったはずだ。

ところがさきほどの回廊がみつからない。
風景は似ている。
道を間違えたのか?

しばらくあたりを歩いた。
中国にきていた恋人とばったりであった。
彼女に案内されるままに歩いていく。

美術館の裏を曲がって。
そこまでは一緒だ。
彼女は階段をのぼっていく。と、そこでシダで編まれた茶色の保護色系のぴっちりとしたカーテンをあげた。回廊は保護色によって閉じられていた。さきほどまで空いていた柱と柱の間の空間がカーテンによって閉ざされ、石畳の一部とかしてしまっていたのだ。

邸宅に入ると。
G氏はすでに着替えていた。
僕もスーツに着替えた。

「これから皇帝夫妻が遊びにきます。あなたもいきましょう」

そういわれてバーに案内された。
その店はG氏の邸宅の南外れにつくられていた。
20人くらい座れるだろうか。
カウンターだけの店である。

そこで皇帝夫妻を待った。
しばらくして二人が現れた。
僕の隣にはクニオが座っている。

彼はブルーの学生服をきてボタンを二つまではずしている。

「何かのまないのか?」

彼にたずねると

「もう2杯飲んだから終わり。3杯やると歳をとる」

彼はそう答えた。
皇帝の奥さんが僕の右隣に座った。
その隣にG氏がいて皇帝ははじの席に腰を下ろした。

皇帝夫妻は二人とも20代である。

夫人と話すことにした。
彼女はえらく気持ちのよい人で話しているだけで気持ちが緩やかになっていく。遊び心があるというのだろうか。声に心が癒されるようだ。あまりに楽しく、たくさん飲んでしまった。皇帝を伺うと落ち着いたまなざしで静かにG氏と話している。

ときおり、僕も皇帝に声をかける。

「どうも」

彼もこちらに挨拶をする。

「いつでもきてください」

夫人をみると笑顔で応じている。
こちらを振り返って彼女がいった。

「現在という時間や場のあり方について教えて欲しいのだけれど」

そうそれがこの国の問題なのだ。
自分が呼ばれたのもその問題と関係がある。
OSのカスタマイズされたPCには問題と自分とをつなぐポインタが記されている。

一度、部屋にかえって思考を整理することにした。
夫人が案内するといって送ってくれた。

部屋は10畳ほどで建物の最上階にあった。
といっても地上10mほどだろう。
ただし、外には雲海と町並みがみえる。

飛行船の操縦席と似ていた。
スチームボーイにでてくるスチーム城の操縦席と似ている。

板の床を掃除しようとするとタカシゲが大きな箱をもって部屋に入ってきた。

「じゃ、洗濯機はここにおいておくから。動くはずだよ」

彼が設置した1㎡くらいのサイコロ状の白い箱は最近中国製の洗濯機であった。蓋をあけると配線が向きだしになっている。LSIの基盤もある。コネクタが3つ外れていたのでつなごうとしたがやめた。このまま起動させるのだ。

起動ボタンを押すとサイクロン音が鳴り響き、洗濯機が起動した。
このタイプのOSには視覚的インターフェスがない。
中国スタイルのインターフェイスだ。

つまりこれは「こうなるだろうな」が操作と直結する。
衣類を放り込んで適当にボタンを押した。

キュイーンという音とともに中の機械が高速回転しているのがわかった。
中では微粒子レベルで再構築を利用した洗濯がおこなわれている。

外見のアバウトさ機能の精細さがズレているのだ。

夫人としばらく談笑した。
しかしなぜこの人はこうも会話が上手なのだろうか。
しばらく考えた。

それからG氏のPCを机においてブラウザを立ち上げた。

投稿者 TKM : 2004年12月24日 16:46

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