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2005年01月29日

桜と難解なアイスクリーム

実家に戻ると小学校時代の同級生が待っていた。

「やあ。憲諌の放棄が正式に決まったらしいよ。いま戻ると鹿児島ではあれを歌うんだ」
「諌言?それどういう意味。歌うって同期の桜?」

「いや違う。正確には法律がそういう方向に向かっているということでこれからは子供の発言が制限されていくみたいだ。軍艦マーチだよ」

彼は子供の頃から早熟であったのだが大人になってもいまだ早熟な話し方が抜けない。難しい言葉を使うのが好きだ。 典型的な擬態性難解症である。

家の向かいにある小山から男性が二人でてきてうちの門の所で談笑している。手には缶コーヒーを持っている。 それを塀の上において二人は立ち話をしている。男性は何かをあけた。ビニールが宙に舞った。

街を歩いているとビニールを足下に捨てる人々をよく目にする。
一時もはやくビニールを手放さなければというあせりなのだろうか。
むしり取るようにビニールの包装をほどき手早く宙に放る。
そうしないと何か不都合があるのだろうか。
タバコでもパンでも包装してあるビニールはなんのためらいもなく地面に放られる。

自動的に気化する包装を開発することが急務だ。
よくみれば町中にはうち捨てられた空き缶とビニールが散乱している。

どんなに綺麗に整えられた区画でも少し影にはいるとそうした風景は珍しくない。 六本木ヒルズは掃除係の人々がいるから表向きは綺麗に整えられている。しかし、かげにある自転車置き場は様子が違う。 その雰囲気は人の内面を語っているかのようで情景はまるで「呪怨」にでてくる荒れ果てた民家である。

家の前にいる二人もそうした振る舞いをするのであろうか。
空き缶を捨て置いて歩み去っては欲しくないのだが。

二人を見つめていると彼らもその視線に気づいたのだろう。
何事かを話している。

「自由が禁じられていく傾向が一般化してくるのは嬉しくないものだね。そういえば君はそういう方向の話が得意だ。 論文を書いたらいいじゃないか」

友人に話しかける。

「そうだね。これから少しやってみるよ」

駅まで歩いていくことにした。
振り返ると門のところにたむろしていた二人は缶を持って立ち去る所だった。

路面には先週降った雪が固まっていた。
郵便局の前を通る当たりで彼が歌の話をした。

「長崎ではさ。明治が生きているからいつもこの歌を歌わせられるんだ」

そういって彼は歌を口ずさんだ。

「そうか。慶應とは少し違うんだね」

大学の違いにかかわらず九州との関わりにおいてはある歌を歌うことが一般的であった。 だから僕は別な歌をイメージしていたのだが彼が歌ったのは違う歌であった。

彼の家は駅前にあった。別れの挨拶をして駅に向かった。駅前には店が三軒ならんでいる。ひとつは果物、もうひとつは魚と果物、 もうひとつが魚と果物と蕎麦。蕎麦でも食べようかな。棚にあった蕎麦とカップ麺と油揚げを買った。

「電車がそろそろきますよ」

駅からアナウンスがきこえた。駅につくと向こう側のホームにいくように言われた。 15分の電車に乗ればいいのだけれど走らなければならないようなので19分の電車に乗ることにした。そうだ指定席を買ってあるのだ。

「15分の電車にのらなきゃ」

そういっておばさんたちが走っていった。

陸橋をわたって17分頃に向こう側のホームについた。
こちら側のホームには巨大なスーパーマーケットが併設されている。
いつもはここでアイスクリームを買っていくのだが今日は間に合いそうにない。
売り子のおじさんが

「アイスあるよ」

とシュガーコーンに盛られたアイスクリームを売っていた。ヨーロピアンスタイルなのはこの地方の特色であろう。 電車がホームにはいってきた。今日は4号車だ。二両編成の小さな特急である。車体はグリーン。側面にベージュのラインが入っている。

室内に入ると一列に10席ほどの座席がならんでいる。僕の席は

「K-1」

であった。後ろにジャージにパンチパーマの人たちが並んでいる。
彼らはP列だ。

電車が動きだした。
友人は論文を書き始めただろうか。
彼がいっていた難解な名称ではじまる法案の名前と歌の名前がどうしても思い出せなかった。

投稿者 TKM : 2005年01月29日 09:16

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